南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

猫と「みんなの願い」

 

前回の投稿に対して、実に様々な意見をいただきました。

そこでひとつ、短いお話を紹介したいと思います。


ある日、人々の心の中に声が聞こえてきます。

神の使いと名乗るその声は、

「重大なお知らせがある」

と語りかけてきます。

 

・地球は誕生から、宇宙時間で言うところの一周期に達した
・それを祝し神が一つだけ願い事を叶えてくれることになった

・それぞれ、心の中で願い事を決めてもらいたい
・一週間後、それぞれ自分の願い事を一つ念じてほしい
・集計の結果いちばん多かった願いを一つだけ、神が叶えることにする

 

多様な意見が出ます。

 

「何より平和だ。核兵器を消してもらおう」

「尽きることのない資源、というのは」
「いや、金だ!金をくれ!」

 

 

そして、ついにその日が来ます。

心の中に響く声。


「先ほど集計が終わりました。色々な願いがあるだろうと思いましたが、意外にまとまっていました‥‥。では発表いたします」

 

神の使いが高らかに発表したその答えは‥‥。

 

『地球上から人間を立ち去らせて下さい』

でした。

人間たちは最後の瞬間、動物たちの歓喜の鳴き声を聞いた‥‥。

 

これは「星新一 編 :ショートショートの広場8 (講談社)」に収められているお話です。

 

野良猫による被害、といってもそれは人から見た一方的なもので、猫から見ると身勝手極まりない論理です。

 

避妊去勢して繁殖できなくする権利が、我々人間にあるのか‥‥という根源的な問いは発せられるべきです。

 

一方で現実的には、猫の交通事故死は殺処分件数を上回りつつあります。

 

このまま繁殖するにまかせれば、「猫と文明の衝突」はますます避けられないでしょう。

我々人類が車を放棄するとも思えません。

 

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猫をこの国に持ち込み、時に繁殖を奨励したのは間違いなく人間です。

しかし「この状況を招いた人間自身が責任を放棄してよいのか」という意見は無視できません。

 

さまざまな考え方がありますが、

 

理想と現実の隙間で、今考えうる最善の策をとること。

そこに謙虚さを忘れてはならないこと。

 

この部分は共有できるのではないかな、と思います。

 

今日は隣人を思いやる日ですから。

それが人でなくても。

 

メリークリスマス。

 

 

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ショートショートの広場 (講談社文庫) [ 星新一 ]