沖縄で豚コレラ(CSF)‥‥。
動物園についての続きを書きたかったのですが‥。
沖縄で豚コレラが発生しましたので、今回はそれについて書きます。
ちなみに現在、「豚コレラ」は「CSF (classical swine fever)」と呼ばれるようになっています。
豚コレラの原因はウイルスであって、細菌感染症である人のコレラとは関係がありません。
というわけで、
「豚コレラ、という名前だと人に感染するような印象を与えてしまう」という理由で改称されました。
重ねて言いますが豚コレラは人にはうつりません。
豚コレラというネーミングの問題点については、2019年2月「豚コレラを斬る」というテーマで書きました。
その後、2019年11月に「豚コレラ」は「CSF」に呼び名が変わったので、その点は良かったのですが‥‥。
ということで、今回沖縄で発生した豚コレラ(CSF)について。
まず、私は獣医師ではありますが畜産や家畜衛生が専門ではありませんので、現段階でこの感染症について専門的なコメントを出すのは控えたいと思います。
ただ報道を見ていて気になるのは、多くの人が矛先をどこかに集中させがちだということです。
「養豚農家の衛生管理が甘かったのではないか」
「国の防疫体制に不備があったのではないか」
ネット上、そのような声が上がっています。
しかし、ひとつ根本的な原因、つまり「誰が悪いのか」を挙げるとするならば、それは「人間」だろうと思います。
もともと、動物というものは余程の理由がない限り、過剰に密集して暮らさないものです。
家畜のように「自分の意思に反して狭い範囲で、同種の仲間同士で朝晩ずっと一緒」ということはありません。
ですから、もし自然界で急性経過のうちに動物を死に至らしめるような感染症があったとしても、「大流行」というレベルにはなかなか移行しないはずです。
遥か昔、人類は家畜を養い始めました。
効率的に飼育するために、同じ種類の動物を出来るだけ多く、目の届きやすい範囲で飼育することを覚えました。
その結果、自然界ではあり得ないような規模の感染症が動物に降りかかるようになりました。
さらにまずいことに、動物から人への感染ー、つまり動物由来感染症のリスクが増大してしまいました。
本来は離れて暮らしていたはずの「人」と「動物(家畜)」が狭い範囲で生活するようになったためです。
家畜での大流行、そして人への感染。
効率的に動物性タンパク質を生産可能になった代償として、人類は重い十字架を負うことになったわけです。
感染経路や発生の原因を追及することは大事です。
しかし犯人を見つけて石を投げようとする側の人間も、ふと立ち止まる必要があります。
自分にその腕力を与えた動物性タンパク質は、いったいどこから来たのかー。
これは、人間という種全体のレベルで考えるべき問題だと思います。