どうぶつえんにいきました。 (2)
以前、天王寺動物園について書きました。
少しお話を続けましょう。
むかし、天王寺動物園に限らず多くの動物園で動物は「見せ物」でした。
珍しい動物をオリに入れて見せる。
芸を仕込ませて観客を喜ばせる。
戦時中であれば、動物に軍服を着せて戦意高揚をはかることもありました。
悲しいことに、戦争が終わっても動物園のあり方が大きく変わる事はありませんでした。
しかし最近になって、動物園の役割に変化が訪れます。
動物園はレクリエーション施設から「種の保存」「動物の研究」に貢献する施設へと、変革をとげ始めたのです。
それに伴い、「生態展示」とよばれる新しい考え方が広がり始めました。
これは、オリに入れた動物見せるのではなく、その動物が本来暮らしている環境ごと展示する方法です。
この展示方法では、展示スペースにその動物の生息環境が再現されます。
(あべのハルカスの下に広がるサバンナゾーン : 天王寺動物園)
生態展示について、誰にでもわかる利点は「動物へのストレスが軽減される」ということです。
逆にすぐ思いつくのは「動物が見えにくくなる」というデメリットです。
木の茂みや岩陰なども再現されますから、「この角度からは尻尾しか見えないなあ」ということも起こりえます。
ただ、別の切り口から考えることも大事です。
それは、その動物が暮らしている環境=その動物が本来のパフォーマンスを発揮できる環境だという点です。
(澄んだ水の中を魚と一緒に泳ぐカバ: 天王寺動物園)
・動物のストレスを軽減し、本来のパフォーマンスが発揮できるように環境を整える。
・その動きを見て、来園者はその動物が持つ本来の能力を知ることができる。
‥‥というようなわけで私が訪れなかった30年の間に、天王寺動物園も変わり続けていました。
ただ、日本の動物園にはまだまだ多くの課題があります。
その一つは、日本に「国立動物園がない」ということなのですが‥‥。
このことにもいずれ触れようと思います。