南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

動物からうつる病気

君は「ボルバキア」を知っているか

「抗生剤で犬のフィラリア症を治療する!」ひと昔前に獣医師がそんなことを言ったら、 「抗生剤で寄生虫は死なんでしょうが!」 とお叱りを受けたでしょう。実際、犬のフィラリア症の原因は 「犬糸状虫(いぬしじょうちゅう)」 という線虫であって、細菌では…

君は「肝蛭」を知っているか (2)

きのう、 『君は「肝蛭」を知っているか』 を書いたら1万を超えるアクセスがありました。oushinjuui.hatenablog.com 動物由来感染症への関心の高さに驚くと共に これで誰かの健康や命が守られれば良いな‥ と思います。 ( 肝蛭の虫卵: Wikipedia)さて、昨日お…

君は「肝蛭」を知っているか

「肝蛭」。特定の学術領域の人以外は、まず読めません。正解は、「かんてつ」。 「蛭」の字は訓読みでは「ヒル」。肝蛭は 「肝臓や胆管に住むヒルのような寄生虫」 のことを言います。 (Wikipedia)特に日本産肝蛭は有蹄類の肝臓実質・胆管に 寄生しており、…

ちょっと変わった講演

沖縄県医師会館で行われた、 〜動物由来感染症としてのSFTS講演セミナー〜 に参加してきました。SFTSについてはこのブログで何度か取り上げましたが 我々獣医師含め、動物との関わり合いのある人たちは 看過できない感染症です。oushinjuui.hatenablog.com …

マンソン・レットウ・ジョウチュウ

何となく、その響きに趣がある。 どの業界にも、そんな言葉があります。経済学なら「コンドラチェフ波動」、 遺伝子工学なら「セントラルドグマ」、 料理なら‥‥「ビーフストロガノフ」。獣医領域にも色々ありますが、 たまたま飼い主さんとの会話に出たので…

猫ひっかき病 (3)

猫ひっかき病のラストです。「猫ひっかき病」に感染する経路は 「猫」に「ひっかかれる」だけではない、 というお話をします。「猫」ひっかき病の保菌動物は、 猫だけではありません。 犬から人への感染も知られています。「猫ひっかき病の4%は犬から」 とい…

猫ひっかき病 (2)

猫ひっかき病 (1) の続きです。・病原菌のバルトネラは猫の血液中にいる ・猫の爪の先にほとんど血は流れていない ・ではなぜ人はひっかかれて感染するのか?という疑問が生じたところで、 前回を終えたのでした。話を続けましょう。まず、ノミの行動をよく…

猫ひっかき病 (1)

「何!犬に咬まれた?君は、犬咬みつき病だ!」「キツツキに突かれた?では、キツツキ突き病だ!」「今度は猫にひっかかれた?猫ひっかき病だ!」どんな病院だ、と思いますね。 しかし、最後のは正しい。「猫ひっかき病」は存在します。典型的な症状として、…

「動物由来感染症」という言葉について

今日はちょっと用語を整理しておきたいと思います。 今思えば、このブログでは普通に 「動物由来感染症」 という言葉を使っていました。 聞きなれない方もいらっしゃるでしょう。 ここでちゃんと説明させていただきます。 「動物由来感染症」とは、 「ヒトと…

SFTS とは何か(5)

SFTSもこの第五回で最後です。 今日は、 「SFTSが動物愛護行政に大きな変化をもたらす可能性」 について述べます。 まず、復習も兼ねてSFTSについておさらいしましょう。 ▶︎SFTS=重症 熱性 血小板減少 症候群 ▶病原体はSFTSウイルス ▶マダニからの感染、あ…

SFTSとは何か (4)

SFTSについての4回めです。 今回は、 「SFTSと動物愛護ボランティアの関わりについて」 述べたいと思います。 例によって、前回までのまとめです。 ▶︎SFTS=重症 熱性 血小板減少 症候群 ▶病原体はSFTSウイルス ▶マダニからの感染、あるいは犬・猫など感染動…

SFTSとは何か (3)

SFTSも3回目です。 今までのところをおさらいすると、 ▶︎SFTS=重症 熱性 血小板減少 症候群 ▶病原体はSFTSウイルス ▶マダニからの感染、あるいは犬・猫など感染動物からの感染が判明している ▶致死率は約16%である 今日は症状などについて書いておきます。…

SFTS とは何か(2)

きのうから、SFTSに関してお話ししています。 前回の復習をしておきましょう。 ▶︎SFTS=重症 熱性 血小板減少 症候群 ▶Severe(重症) Fever with(熱性) Thrombocytopenia(血小板減少症) Syndrome(症候群) の略 ▶病原体はSFTSウイルス ▶当初、ウイルスを持った…

SFTS とは何か(1)

重症熱性血小板減少症候群 (じゅうしょう ねっせい けっしょうばん げんしょうしょう しょうこうぐん) 長いですね。 通常、SFTSと略します。 Severe = 重症 Fever with = 熱性 Thrombocytopenia = 血小板減少症 Syndrome = 症候群 ですから、SFTSです。 病…

ナメクジに注意!

報道に触れてもうご存知の方も多いと思いますが、 海外でナメクジを食べて亡くなった方がいます。 www.cnn.co.jp 2018年11月6日付のCNNニュースです。 原因は、ナメクジの中に寄生していた 「線虫」です。 「線虫」はミミズのような形をした寄生虫です。 も…

病原体より先に‥

往診。 ピンポーン、あるいはノック。 つまり、動物の病気を治しに出向くわけです。 もちろん、大事な仕事です。 皆さんも、 「それこそ往診獣医の仕事でしょ!」 とおっしゃるでしょう。 しかし、それより大事なことがあります。 それは、 「動物が病気にな…