南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

猫のエサやり問答 (2)

前回の投稿について、少し書き足しておきましょう。 まず、この写真を見てください。 この高齢の女性は一人暮らしで、膝には人工関節が入っています。 奥に猫が見えますが、この猫はさくら猫です。 さくら猫については以下をご参照ください。 彼女は近所の猫…

猫のエサやり問答 (1)

往診中、少し時間が空くことがあります。 公園の駐車場に車を停めて、少し身体を伸ばそうと車外に出ると。おやおや、まただ‥‥。 ここは海岸沿いの大きな公園。 最近、野良猫が増えています。 あたりを見回すと‥‥。 むむっ、いました。 キャットフードを撒い…

往診獣医の事件簿16 〜専務、帰る〜

秋から冬にかけて、往診中にトックリキワタの花に目を奪われます。 トッキリキワタは中南米原産。 別名「南米ザクラ」。 沖縄では街路樹としてもよく見かけます。 さて数年前のある日、私はトッキリキワタの木の下で少しばかり休憩をしていました。 と、そこ…

検査結果は陽性?陰性?

「う〜ん、強陽性ですねぇ‥‥」 沖縄は冬でもフィラリア予防が必要です。 予防していないと検査キットで陽性の判定が出ることもしばしばです。 そんなとき念のため飼い主さんと一緒に顕微鏡で血液を観察すると、グルグル回るフィラリアを見ることができます。…

保護犬のために投げた男の話

私がまだ大学生だったころ。 実習先の動物病院に、あるプロ野球選手の愛犬が来院したことがありました。 私がいない日の来院だったため、実際にその方にお会いしたこともその犬を診たこともありません。 「シモヤナギという選手を知っていますか?」 後日、…

よくわかるトキソプラズマ症7 〜知識のワクチン〜

50枚くらいイラストを描きました。 一週間くらい掛かりましたが、読むとあっという間ですね‥‥。 忘れてしまっている人のために、前回はこちら。

あなたの知らないローストビーフの世界

今日ネットニュースを見ていたら、ローストビーフの作り方を紹介する記事がありました。 本格ローストビーフを自宅で! 時短でお手軽にプロ級の味! おもてなしにもぴったり! ‥‥というような見出しでした。 ではここで、下の表をご覧下さい。 さて何の暗号…

丑三つ時にカリカリと‥‥

このところ忙しくて、ようやく時間が取れました。 ちょこっとずつトキソプラズマのマンガを描き進めていますが、夜中しか時間が取れないので、本当にちょこっとずつしか進みません。 ふと気づいて足元を見ると‥‥、 描きかけのイラストや下書きの用紙が床に散…

猫が食べてはいけない生きもの in 沖縄

那覇新都心。 沖縄の経済、文化を牽引する地域です。 (Wikipedia) 人口も交通量も多いこの街にも、たまに往診に来ます。 すると‥‥。 む? ビルの駐車場に‥‥ 何かいるぞ? 何かな? 動かないな。 !!!! 動いた! そこそこ速い! この生き物は‥‥ 沖縄の方言…

往診獣医の事件簿15 〜何かが匂う〜

夕方。 その日最後の往診も終わり、自宅に車を走らせる途中。 男性の声で、何とも恐ろしい電話が掛かってきました。 「部屋中、血だらけだ!血の下痢をしてる!」 ただごとではありません。 「血便ですか?」 「そう、すごい量だ‥‥!腸みたいなのも出てる」 …

よくわかるトキソプラズマ症6 〜彼らはどこを目指すのか〜

ようやく6回目まで来ました。 読んでくれている方、ありがとうございます。 忘れてしまった方のために前回はこちら。 では、本題に入りましょう。 またいずれ詳しく解説しますが、トキソプラズマの終宿主は猫です。 彼らは猫の体内に入り込まないとライフサ…

オモテか、ウラか。

今日は久しぶりに犬のお話を。 ちょっとした推理にお付き合い下さい。 まず、この写真。 ラブラドール・レトリバーの前足です。 ううむ、普通の状態ではないですね。 手の甲の毛が抜けて肌も荒れています。 地面とこすれ合ったような跡もあります。 よく診て…

よくわかるトキソプラズマ症5 〜感染経路4〜

トキソプラズマの第5回です。 久しぶりなので、大まかな流れを忘れている方は前回からご覧下さい。 前回はこちら。 では今回、「なぜ生肉がいけないか」のお話に入りましょう。 ‥‥つづく。 というわけで、 「猫の糞」と「生肉」がどのように関連しているのか…

【ご案内】 あなたが知らない食の世界 Vol. 3

往診獣医師の大場三緒子先生が3回目のセミナーを開催されます。 大場先生は、沖縄県の元食品衛生監視員でもあります。 今回のテーマはノロウイルス。 食中毒原因の上位ですね。 詳しくは下のご案内をご覧ください。 当日はビックリするようなノロウイルス食…

よくわかるトキソプラズマ症4 〜感染経路3〜

何とかトキソプラズマ症の第4回を描きました。 第3回はこちらです。 文章で書くと一瞬ですが、絵にすると三日くらいかかります。 でもわかりやすい方が良いのです。 あとあと描きますが、これを読んでいる皆さんが感染している可能性があるからです。 ‥‥つづ…

お見事!な看板

トキソプラズマのお話の途中ですが、猫のフンの話まで来ましたので、ここでちょっと「フン」についての話を挟みたいと思います。 動物のフンには、さまざまな病原体が含まれていることがあります。 ですから ・散歩中の犬のフンをそのままにして去る ・飼い…

よくわかるトキソプラズマ症3 〜感染経路2〜

トキソプラズマ症の感染経路についてお話を進めています。 毎回、本当に少しずつしか進みませんが(描くには相当時間がかかるのですが‥‥)、確実にお話は進んでおります。 わかりにくくなった方は、最初から戻ってお読み下さい。 また、トキソプラズマ症の詳し…

子猫を助ける小さな手

トキソプラズマ症のお話を続けている途中ですが、少し猫と子供のお話を挟みます。 まず、この写真。 一昨日、私が往診中に出会いました。 この子たちは、二匹の猫のもらい手を探して町の中を歩いています。 子供たちそれぞれの家では飼えない、ということで…

よくわかるトキソプラズマ症2 〜感染経路1〜

ちょっと間があきましたが、「トキソプラズマ症」について漫画形式でまとめています。 トキソプラズマは動物由来感染症であると共に、母子感染症でもあります。 実際に障がいを持ってお生まれになるお子さんもおり、患者会も存在します。 トーチの会 – 先天…

【ご報告】 なは動物愛護フェスタ

「なは動物愛護フェスタ」に参加してきました。 愛犬健康相談のテントで3時間、30件近くの相談をお受けしました。 事故があってはいかんと思い、往診カバンを横に置いて相談をお受けしていましたが、何事もなく終わってホッとしました。 「歯石ですか、う〜…

【お知らせ】 なは動物愛護フェスタ

頑張ってトキソプラズマ症の続きを描いている所ですが、ちょっと急ぎの告知です。 日取りが明日にせまっていますが、 なは動物愛護フェスタが今年も開催されます。 ■日時:令和元年 10 月 27 日(日) 10 時~13 時■会場:『環境の杜ふれあい』 南風原町字新川 58…

よくわかるトキソプラズマ症1 〜発見〜

色々と試行錯誤しましたが、結局マンガにしてみました。 文章よりわかりやすく解説できそうですが、絵を描くぶん時間が掛かるので少しずつ進めていきます。 ◆解説 トキソプラズマはヒトを含む哺乳類、鳥類などの恒温動物に感染する寄生性原虫です。 ただし、…

猫からうつる?うつらない?

前回猫エイズについて書いたら、いつもより反響が大きくてビックリしています。 「猫エイズは人にうつらない」という情報提供の必要性と重要性を再認識しました。 動物の病気について飼い主さんに説明するとき、よく聞かれる事があります。 「人間にもうつり…

猫エイズ 〜内弁慶なウイルス〜

最近猫エイズをよく診るな‥‥。 飼い主さんにも「詳しいことはブログに書いておきますね」と言ったんだよなぁ。 早く書かないと‥‥書かないと‥‥。 グゥグゥ‥‥。 「起きてください、起きてくださいよ」 「ハッ!寝てたか!‥‥ってあんた誰や」 「猫エイズウイル…

猫エイズ 〜まず冷静に〜

このところ、猫エイズを診る日が続いています。 抗生剤を投与してもなかなか鼻水がおさまらない、 食が細くて他の子猫より発育が遅れている、 こんなとき怪しいなと思って検査すると猫エイズ陽性の場合があります。 よく誤解されていることですが猫エイズウ…

空を飛ぶ、肉?

前回、ビタミンCを合成できない動物について書いたときに、オオコウモリについても触れました。 私がふだん往診している沖縄県の南部地域にも、オリイオオコウモリという種類のオオコウモリがいます。 彼らは枝にぶら下がり、せっせと果実をかじっています。…

ヒトとモルモットの共通点は‥‥。

前回のヤギのお話を書いたら、往診先で 「ヤギはビタミンCを合成できてすごいですね!」 というような感想をいただきました。 他の動物たちの名誉のために補足しておくと、多くの動物はビタミンCを体内で合成可能です。ヒトは合成できませんが、これはヒトの…

病気のヤギが自作するものは?

このところ、妙にヤギの往診が多くなっています。もともと沖縄にはヤギをペットとして飼育する方がたくさんいます。ヤギを動物病院に連れて行くのは大変ですから、往診を頼むケースが増えるのは当然と言えますね。 さて、ヤギももちろん病気になります。 ち…

獣医学と歴史(7) 〜猫放し飼い令?〜

猫の室内飼いがスタンダードになりつつあります。外に出た時の事故、感染症のリスク。 それに他人の敷地内への糞尿被害。このままいけば室内飼育を義務付ける法律が出来るかも知れません。 しかし日本では昔、逆の政策がとられたことがあります。 言ってみれ…

ヤギ、ガジュマル、手品師?

先週、南城市の小学校でヤギを診ました。駆虫剤入りのリンゲルを皮下点滴。 ちょうど手頃なガジュマルの木があったので、その下で行いました。嫌がって逃げ出す元気があればよいのですが、この子は立ち上がるのもやっと。 大人しく点滴を受けています。ちょ…