南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

【ご案内】 あなたが知らない食の世界 No2

今日はセミナーの告知です。1ヶ月前にも開催された「あなたが知らない食の世界」。 講師は、私と同じように往診で回っていらっしゃる獣医師の大場三緒子先生です。大好評につき、早くも二回目が開催されるそうです。詳細および第一回の様子は下記をご覧くだ…

なぜ?フィラリア感染犬に「予防薬」②

前回、 「フィラリア感染犬にも予防薬を飲ませる理由」 についてお話しました。今日は注意点を解説しておきます。まず、押さえておかねばならないのはフィラリア予防薬にはさまざまな種類があるということです。 (フィラリア予防薬の一部: ノミ・マダニや消…

なぜ?フィラリア感染犬に「予防薬」①

たまに、こんなやりとりがあります。獣医師「検査の結果、残念ながらフィラリア陽性でした」 飼い主「まぁ‥‥!」 獣医師「では、予防薬を飲ませましょう」 飼い主さん「えっ?治療薬は?」確かに、ちょっと変ですね。ふつう何か病気があると、 「その病気を…

出張授業 〜うさぎは高跳びするか〜

昨日は「うさぎのふれあい教室」を開催してきました 場所は南城市の船越小学校。 入ってすぐの所にビオトープのある楽しい小学校です。 毎年、実際にうさぎを観察しながらお話を進めていきます。教室の窓から入る光に耳を透かしてみたり。 目の位置、指の数…

往診獣医の事件簿14 〜もっと光を〜

ある夜。 遅くまでかかった往診の帰り。 携帯が鳴ります。 あわてた女性の声。「道路脇に、車にはねられた犬がいます!」 「どこか近所の犬ですか?」 「知らない犬です!足を轢かれてます!」交通事故。 往診での対応が難しい症例です。 無事に見えても内臓…

動物を飼うと健康に良い?

私の往診先にはもちろん動物がいるわけですが、そこには当然人間もいます。 ご高齢の飼い主さんも多く、私も 「この子のためにも、私がシャンとしてないと」というような言葉をよく伺います。 「動物を飼うことは健康に良い」 確かに、これはよく言われる通…

日本人の動物観

沖縄を台風17号が通過中。 毎度毎度のこととは言え、こればっかりはどうしようもありません。台風とからめて、「日本人の動物観」についてのお話をします。ということで、そのお話に欠かせない人物にご登場願いましょう。和辻 哲郎(わつじ てつろう) 1889年…

恐怖症はいつから?

「見てごらん!コンクリートの上に猫の足跡があるよ!」 私が地面を指さします。息子は当時、3歳くらいだったでしょうか。 驚いた目でそれを見つめてひとこと。「わかった!この辺に、すごく重い猫がいるんだ!」今でもコンクリートに足跡があると、思い出…

ペットフードのサルモネラ汚染について

ノースペット社の「ササミ姿干し製品」へのサルモネラ属菌混入事件。 昨日お昼のワイドショーでも取り上げられていました。 事件の概要は下記をご覧下さい。同社の「ビーフ干し肉製品」からもサルモネラ偽陽性の判定が出ています。 お心当たりのある方はもう…

獣医学と料理 (5) 〜スマホにラップを巻こう〜

運動会シーズン。 お弁当を作る機会も多くなってきます。 「スマホでレシピを見ながら‥‥」 という人も多いでしょう。動物と暮らしている方も、最近はたいていスマートフォンをお使いになります。 獣医師が言ってしまうと身も蓋もありませんが、動物は決して…

脱・未知との遭遇 〜もらわれ先でパニックにならないために〜

誰だって、初めて見るものには戸惑うものです。【初めて往診カバンを見た猫の例】 そういえば昔、階段を下りられない犬がいました。 もっと正確に言えば、「段差」を下りられないのです。この子は子犬の頃から部屋を出た事がなく、散歩にも行った事がないと…

獣医学と歴史(6) 〜覇王が最後にしたことは〜

前回、沖縄県のスリースマイルプロジェクトのご紹介をしました。 反響が大きく、たくさんの方にお知らせできてよかったなと思っています。さてどんな人にも本来、動物に対する愛情があるだろうと私は思っています。それが誰であれ、どの時代の人であれ。 今…

スリースマイルプロジェクト

殺処分されるはずだった収容犬が、再び社会に戻って行けたら。今日はそんなニュースを目にしましたのでご紹介します。 沖縄女子学園は、沖縄県にある女子少年院。 ここでの「3-Re Smile (スリースマイル)プロジェクト」 の記事ですね。 3-Re Smileとは、 R…

夜に口笛‥‥蛇が出る?

ちょっと調べないといけないことがあって、久しぶりに疫学の勉強をしています。疫学というのは「集団における疾病の発生原因や予防などを研究する」学問領域のことです。 これをしっかり勉強していないと、ある疑問に対して誤った結論を導いてしまいます。た…

台風+雨風好きの犬=?

現在、沖縄は台風が通過中です。 今日の往診中も荒れた海を見ました。さて、雨や風が強くなると妙にテンションが上がる犬がいます。数年前、台風のあと電話がありました。「犬の目が、腫れてるんですよ」 「いつからですか?」 「いつからと言うか‥‥、昨日の…

「ここ」発見!

8/17から行方不明だった「ここ」が発見されました!糸満市内の畑で保護されたそうです。全身傷だらけだったそうですが、すでに飼い主さんのもとに戻り、かかりつけの動物病院で治療も受けたとの情報が入りました。皆様のご協力、感謝申し上げます。 8/17に花…

【ご案内】 あなたが知らない食の世界

今日はセミナーのご案内です。那覇市を中心に、私と同じように往診で小動物臨床をされている大場三緒子(おおばみおこ)先生が「あなたが知らない食の世界」というテーマで講演されます。 開催日 2019年 9月6日 (金) 時間 11:00〜12:30会場 (株)玄米酵素 沖縄…

2匹の犬と2枚のポスター

ことし2019年8月17日の夜。 糸満市で花火が上がりました。 「第31回糸満ふるさと祭り」初日の終わりを告げる花火です。この大きな音に驚いて、「ここ」という名前の1匹の飼い犬が逃げ出してしまいました。 場所は糸満市役所付近。 (Google Maps) もちろん、…

獣医が学校に出現する理由

前回、中学校に伺ったことを書きました。なぜ獣医師が学校を訪れるのか。 今日はそのことについて。 私が学校を訪問する理由は、 「学校が動物愛護教育の普及啓発の場」 だからです。 これは何も、私個人の勝手な考えではありません。 いわゆる動物愛護法に…

TNR、さくらねこ という言葉

昨日は午後から南城市立玉城(たまぐすく)中学校に講話に行きました。ちなみにその5分前まで玉城幼稚園にいました。 海の見える素敵な幼稚園です。 ここでは子ウサギを診ました。 さて玉城中学校には「ボランティア部」があって、今回そこからのお招きでやっ…

獣医が深夜に出かけたら

八月の終わり、深夜2時。バーの看板。 赤提灯。 スナックのあかり。と、そこへ。 煌びやかな雰囲気をかき乱す、ただならぬ足音。 呼び込みのお兄さんが思わず振り返ると、男が一直線に駆けて来るではありませんか。 「そこまで酒に飢えているのか」 しかし…

ウジ対策 治療編

今回は「ウジを見つけたあとどうすればいいか」という点について述べます。まず言っておかねばならないのは、絶対条件として「獣医師の診察を受けること」です。ウジは体内深くに侵入しますし、肛門から入ったものは腸管を食い荒らします。 外科的にウジを取…

ウジ対策 予防編

前回、ウジを招きやすい条件について解説しました。そこで今回は「招かないようにするためにはどうすればよいか」のお話をしましょう。 1.毛刈りをする 単純に、毛が短ければ異常を発見しやすくなります。また、毛玉はハエやウジの基地になります。毛玉を除…

ウジを招く条件とは‥‥

今日の内容にはウジが出てきます。補正をかけて白黒画像にしてありますが、患部の写真もあります。あまり気持ちの良い写真ではありませんが、ウジの被害に遭う動物が出ないように、注意喚起の意味で書きました。とは言え、幼虫系が怖い方はご遠慮下さい。 ‥‥…

さて、ハエの話をしようか‥‥。

今日は「ハエ」のお話をします。このところ、ハエにまつわる往診が立て続けにありました。ハエの生態について知識がない飼い主さんもいるようですので、ここらでまとめておきましょう。ちよっと気持ち悪い話かも知れませんが、大事なことです。下の写真は、…

ジンブンスーブ???

移り住んで10年ほどたつと、沖縄の方言にもだいぶ慣れてくるものです。 しかし、今でもたまに面食らうことがあります。 狂犬病の予防注射を打ちに行ったときのこと‥‥。「こんにちは」 「あっ!ちょっと待ってて、うちの犬はよその人見ると興奮するから」 「…

心臓に、毛が生える?

前回「心臓に骨がある」という話を書きました。ついでに補足しておくと、本当に 「心臓に毛が生える」 ことがあります。「あいつは、心臓に毛が生えたようなやつだ」という言い回しがありますが、実際に心臓に毛が生えるわけです。これを病理学的には「絨毛…

心臓の、ホネ?

「心臓に骨がある」と言うと一般の方は驚くことでしょう。しかし獣医領域では、珍しいことではありません。 ある種の動物では心臓に骨があります。 これを「心骨(しんこつ)」と言います。 心骨は意外に皆さんのなじみ深い動物で見られるのですが‥‥。‥‥という…

育児放棄?‥‥ではなくて。

おや、電話がかかって来ました。「母親なのに、赤ん坊にほとんどおっぱいあげないんですよ。というかね先生、そもそも」 「はい、そもそも」 「赤ん坊のとこにいないんです。産んだばっかりですよ!日に2、3回は戻ってるようですけどね‥‥」 「そんなもんです…

カラスとクルミと古代オリンピック

たとえば、クルミを割ろうとする。 手元にカナヅチがない。 どうしようか‥‥。高いところから落とせれば割れる? 二階から落としてみるか。 いや、もっと高い所からでないと。 5階?10階? さすがに20階からなら。 よし、行こう! ‥‥ヒイヒイ、長い階段だなぁ…